プロット「人形」

 内村良介(25)会社員
 藤田洋(25)良介の旧友
 間宮早紀(24)良介の恋人
 峰岸秀樹(42)霊媒
 中島元博(33)心霊ライター

 ひどく疲れた様子の藤田が良介のアパートを訪ねてくる。良介は何も聞かずに部屋に入れてやるが、藤田は横柄な態度で自慢話をするばかり。よく片付いた良介の部屋で遠慮なくタバコを吸いスナック菓子とビールの缶を散らかす。藤田は木彫りの薄気味悪い人形を部屋に置いていく。
 翌日、藤田が自殺する。葬式を終えた良介と早紀は喪服姿でファミレスに入る。だらしないが憎めない奴だった藤田の思い出話に花を咲かせる。三人は大学のオカルト研究会で知り合った。知らない人の葬式に参加したり好き勝手やっていた。
 良介は部屋に残された人形を燃えるゴミの日に捨てるが、部屋に帰るとドアの前に人形が置かれている。川や海に捨ててもドアの前に人形が置かれる。藤田の墓に人形を置いてから戻ってこなくなる。

 良介に早紀から連絡があり、見せたいものがあると言われて部屋に通される。部屋には藤田の置いていった人形と同じものがある。ある日ポストに投函されていて、良介と同じように何度捨てても戻ってきてしまう。良介の部屋に人形が戻らなくなった日から早紀の部屋に人形が現れたことを知り、良介は責任を感じる。早紀は信頼できる専門家に相談しようと提案する。
 良介と早紀は霊媒師の峰岸を訪ねる。早紀は峰岸と知り合いらしく、独特の専門用語で会話し、敬意を露わにする。部下を率いて尊大な峰岸は早紀に免じた特別料金として五万円で人形を引き取る。早紀は嬉しそうだが金がない。良介はしぶしぶ五万円を支払う。
 峰岸を信用できない良介は早紀を心配する。藤田を救えなかったことに責任を感じていた良介は早紀と一緒に暮らしたいと伝える。
 幸せな生活は長く続かない。良介が帰宅途中の電車内でスマホを見ていると「インチキ霊媒師謎の集団自殺」という記事を発見する。人形を引き取ってもらった峰岸だ。
 良介が部屋に帰ると早紀が部屋の片隅で泣いている。テーブルの上に人形が置かれている。心の支えだった峰岸が自殺したことに早紀はショックを受けている。良介は早紀を抱きしめ、僕が君を守ると伝える。
 人形との生活が始まる。藤田は良介や早紀と一緒にいたいのかもしれない。そう思うようになってから良介は人形に愛着を持つようになる。人形がなければ良介と早紀が結びつくこともなかった。藤田のように憎めない人形だ。早紀は人形を好きになれず、良介も死んでしまうのではないかと不安になる。
 早紀は心霊ライターの中島を呼び出す。中島は峰岸の事件や藤田が生前に関わっていた事件について調べていて人形の行方を追っている。人形は本来の持ち主に返すべきだと話し、人形を預かって去っていく。
 その夜、早紀と良介は警察から呼び出され、厳しい取り調べを受ける。中島は人形を受け取った直後に刺殺されたこと、最後に会った人物が早紀だったことを知る。早紀は人形のことを話すが、中島の所持品に人形はなかった。
 早紀と良介が部屋に帰ると人形が置いてある。人形が戻り少し嬉しそうな良介。早紀はヒステリーになり、良介に人形を持たせて追い出す。
 良介は行く当てもなく放浪し車に跳ねられ意識不明の重体となる。その際に人形を紛失してしまう。良介は人形の行方について早紀に連絡するが既に住所も電話番号も変わっている。

 藤田が死んで一年目の命日、墓参りに来た良介は早紀と再会する。二人ともやつれている。良介は人形の行方を早紀に聞く。早紀は人形なら部屋にあると答える。良介を死なせたくなかった早紀は病室から人形を持ち去った。
 早紀は人形と仕方なく暮らし、いつしか人形に愛着を持つようになる。良介と早紀を結びつけたのも人形だった。
 早紀は部屋に人形を戻していたのは良介だと指摘する。人形を奪われた良介は嫉妬に狂って峰岸や中島を殺したと推理する。
 そんなわけはないと良介は言う。川や海に捨てた人形を回収できるわけがない。良介が守りたかったのは人形ではなく早紀であるし、早紀から人形を奪い返そうとはしなかった。妄想に囚われる早紀を良介は説得し、やはり自分が守らなければと考える。
 人形に会いたいなら来てと誘われた良介は早紀の部屋に入る。早紀の部屋は物が少なくなり生活感がなくなっている。人形はテーブルの上に置かれている。良介はただジッと人形を見つめる。
 早紀は金槌を手にして「どうしてか分からないけど、今までずっと人形を壊せなかった。でも今なら壊せそうな気がする」と言う。良介は早紀を止める。早紀は「良介が責任取って人形を壊して」と言う。良介は早紀から金槌を受け取り、人形を壊す。

 警察署で取り調べを受ける良介は人形を壊しただけで早紀を殺していないと主張する。警察には人形が何のことか分からない。現場には鈍器で撲殺された早紀と金槌を手に泣き叫ぶ良介がいただけで人形などなかった。
 良介の部屋を家宅捜索する刑事たち。部屋は荒れ果て、ゴミだらけになっている。刑事が大切そうに保管されている人形を見つける。良介の証言を聞いている刑事は、この部屋に人形があるのは辻褄が合わないな、と話す。人形は証拠品として押収される。刑事は仕事を終えて家に帰る。部屋の片隅に人形が置かれているのを刑事は気付かない。

おわり